万葉集の第16巻を一覧にまとめました。
万葉集の第16巻一覧
3786 | 春さらばかざしにせむと我が思ひし桜の花は散りにけるかも其一 |
3787 | 妹が名に懸けたる桜花咲かば常にや恋ひむいや年のはに其二 |
3788 | 耳成の池し恨めし我妹子が来つつ潜かば水は涸れなむ一 |
3789 | あしひきの山縵の子今日行くと我れに告げせば帰り来ましを二 |
3790 | あしひきの玉縵の子今日のごといづれの隈を見つつ来にけむ三 |
3791 | みどり子の若子髪にはたらちし母に抱かえひむつきの稚児が髪には木綿肩衣純裏に縫ひ着頚つきの童髪には結ひはたの袖つけ衣着し我れを丹よれる子らがよちには蜷の腸か黒し髪をま櫛持ちここにかき垂れ取り束ね上げても巻きみ解き乱り童になしみさ丹つかふ色になつける紫の大綾の衣住吉の遠里小野のま榛持ちにほほし衣に高麗錦紐に縫ひつけ刺部重部なみ重ね着て打麻やし麻続の子らあり衣の財の子らが打ちし栲延へて織る布日さらしの麻手作りを信巾裳成者之寸丹取為支屋所経稲置娘子が妻どふと我れにおこせし彼方の二綾下沓飛ぶ鳥明日香壮士が長雨禁へ縫ひし黒沓さし履きて庭にたたずみ退けな立ち禁娘子がほの聞きて我れにおこせし水縹の絹の帯を引き帯なす韓帯に取らしわたつみの殿の甍に飛び翔けるすがるのごとき腰細に取り装ほひまそ鏡取り並め懸けておのがなりかへらひ見つつ春さりて野辺を廻ればおもしろみ我れを思へかさ野つ鳥来鳴き翔らふ秋さりて山辺を行けばなつかしと我れを思へか天雲も行きたなびくかへり立ち道を来ればうちひさす宮女さす竹の舎人壮士も忍ぶらひかへらひ見つつ誰が子ぞとや思はえてあるかくのごと所為故為いにしへささきし我れやはしきやし今日やも子らにいさとや思はえてあるかくのごと所為故為いにしへの賢しき人も後の世の鑑にせむと老人を送りし車持ち帰りけり持ち帰りけり |
3792 | 死なばこそ相見ずあらめ生きてあらば白髪子らに生ひずあらめやも |
3793 | 白髪し子らに生ひなばかくのごと若けむ子らに罵らえかねめや |
3794 | はしきやし翁の歌におほほしき九の子らや感けて居らむ一 |
3795 | 恥を忍び恥を黙して事もなく物言はぬさきに我れは寄りなむ二 |
3796 | 否も諾も欲しきまにまに許すべき顔見ゆるかも我れも寄りなむ三 |
3797 | 死にも生きも同じ心と結びてし友や違はむ我れも寄りなむ四 |
3798 | 何すと違ひは居らむ否も諾も友のなみなみ我れも寄りなむ五 |
3799 | あにもあらじおのが身のから人の子の言も尽さじ我れも寄りなむ六 |
3800 | はだすすき穂にはな出でそ思ひたる心は知らゆ我れも寄りなむ七 |
3801 | 住吉の岸野の榛ににほふれどにほはぬ我れやにほひて居らむ八 |
3802 | 春の野の下草靡き我れも寄りにほひ寄りなむ友のまにまに九 |
3803 | 隠りのみ恋ふれば苦し山の端ゆ出でくる月の顕さばいかに |
3804 | かくのみにありけるものを猪名川の沖を深めて我が思へりける |
3805 | ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ますここだ恋ふれば |
3806 | 事しあらば小泊瀬山の石城にも隠らばともにな思ひそ我が背 |
3807 | 安積山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに |
3808 | 住吉の小集楽に出でてうつつにもおの妻すらを鏡と見つも |
3809 | 商返しめすとの御法あらばこそ我が下衣返し給はめ |
3810 | 味飯を水に醸みなし我が待ちしかひはかつてなし直にしあらねば |
3811 | さ丹つらふ君がみ言と玉梓の使も来ねば思ひ病む我が身ひとつぞちはやぶる神にもな負ほせ占部据ゑ亀もな焼きそ恋ひしくに痛き我が身ぞいちしろく身にしみ通りむらきもの心砕けて死なむ命にはかになりぬ今さらに君か我を呼ぶたらちねの母のみ言か百足らず八十の衢に夕占にも占にもぞ問ふ死ぬべき我がゆゑ |
3812 | 占部をも八十の衢も占問へど君を相見むたどき知らずも |
3813 | 我が命は惜しくもあらずさ丹つらふ君によりてぞ長く欲りせし |
3814 | 白玉は緒絶えしにきと聞きしゆゑにその緒また貫き我が玉にせむ |
3815 | 白玉の緒絶えはまことしかれどもその緒また貫き人持ち去にけり |
3816 | 家にありし櫃にかぎさし蔵めてし恋の奴のつかみかかりて |
3817 | かるうすは田ぶせの本に我が背子はにふぶに笑みて立ちませり見ゆ田廬者多夫世<反> |
3818 | 朝霞鹿火屋が下の鳴くかはづ偲ひつつありと告げむ子もがも |
3819 | 夕立の雨うち降れば春日野の尾花が末の白露思ほゆ |
3820 | 夕づく日さすや川辺に作る屋の形をよろしみうべ寄そりけり |
3821 | うましものいづく飽かじをさかとらが角のふくれにしぐひ合ひにけむ |
3822 | 橘の寺の長屋に我が率寝し童女放髪は髪上げつらむか |
3823 | 橘の照れる長屋に我が率ねし童女放髪に髪上げつらむか |
3824 | さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む狐に浴むさむ |
3825 | 食薦敷き青菜煮て来む梁にむかばき懸けて休むこの君 |
3826 | 蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家なるものは芋の葉にあらし |
3827 | 一二の目のみにはあらず五六三四さへありけり双六のさえ |
3828 | 香塗れる塔にな寄りそ川隈の屎鮒食めるいたき女奴 |
3829 | 醤酢に蒜搗きかてて鯛願ふ我れにな見えそ水葱の羹 |
3830 | 玉掃刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃かむため |
3831 | 池神の力士舞かも白鷺の桙啄ひ持ちて飛び渡るらむ |
3832 | からたちと茨刈り除け倉建てむ屎遠くまれ櫛造る刀自 |
3833 | 虎に乗り古屋を越えて青淵に蛟龍捕り来む剣太刀もが |
3834 | 梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く |
3835 | 勝間田の池は我れ知る蓮なししか言ふ君が鬚なきごとし |
3836 | 奈良山の児手柏の両面にかにもかくにも侫人の伴 |
3837 | ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉に似たる見む |
3838 | 我妹子が額に生ふる双六のこと負の牛の鞍の上の瘡 |
3839 | 我が背子が犢鼻にするつぶれ石の吉野の山に氷魚ぞ下がれる懸有反云佐<我>礼流 |
3840 | 寺々の女餓鬼申さく大神の男餓鬼賜りてその子産まはむ |
3841 | 仏造るま朱足らずは水溜まる池田の朝臣が鼻の上を掘れ |
3842 | 童ども草はな刈りそ八穂蓼を穂積の朝臣が腋草を刈れ |
3843 | いづくにぞま朱掘る岡薦畳平群の朝臣が鼻の上を掘れ |
3844 | ぬばたまの斐太の大黒見るごとに巨勢の小黒し思ほゆるかも |
3845 | 駒造る土師の志婢麻呂白くあればうべ欲しからむその黒色を |
3846 | 法師らが鬚の剃り杭馬繋いたくな引きそ法師は泣かむ |
3847 | 壇越やしかもな言ひそ里長が課役徴らば汝も泣かむ |
3848 | あらき田の鹿猪田の稲を倉に上げてあなひねひねし我が恋ふらくは |
3849 | 生き死にの二つの海を厭はしみ潮干の山を偲ひつるかも |
3850 | 世間の繁き仮廬に住み住みて至らむ国のたづき知らずも |
3851 | 心をし無何有の郷に置きてあらば藐孤射の山を見まく近けむ |
3852 | 鯨魚取り海や死にする山や死にする死ぬれこそ海は潮干て山は枯れすれ |
3853 | 石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふものぞ鰻捕り食せ賣世反也 |
3854 | 痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を捕ると川に流るな |
3855 | さう莢に延ひおほとれる屎葛絶ゆることなく宮仕へせむ |
3856 | 波羅門の作れる小田を食む烏瞼腫れて幡桙に居り |
3857 | 飯食めどうまくもあらず行き行けど安くもあらずあかねさす君が心し忘れかねつも |
3858 | このころの我が恋力記し集め功に申さば五位の冠 |
3859 | このころの我が恋力賜らずはみさとづかさに出でて訴へむ |
3860 | 大君の遣はさなくにさかしらに行きし荒雄ら沖に袖振る |
3861 | 荒雄らを来むか来じかと飯盛りて門に出で立ち待てど来まさず |
3862 | 志賀の山いたくな伐りそ荒雄らがよすかの山と見つつ偲はむ |
3863 | 荒雄らが行きにし日より志賀の海人の大浦田沼は寂しくもあるか |
3864 | 官こそさしても遣らめさかしらに行きし荒雄ら波に袖振る |
3865 | 荒雄らは妻子の業をば思はずろ年の八年を待てど来まさず |
3866 | 沖つ鳥鴨とふ船の帰り来ば也良の崎守早く告げこそ |
3867 | 沖つ鳥鴨とふ船は也良の崎廻みて漕ぎ来と聞こえ来ぬかも |
3868 | 沖行くや赤ら小舟につと遣らばけだし人見て開き見むかも |
3869 | 大船に小舟引き添へ潜くとも志賀の荒雄に潜き逢はめやも |
3870 | 紫の粉潟の海に潜く鳥玉潜き出ば我が玉にせむ |
3871 | 角島の瀬戸のわかめは人の共荒かりしかど我れとは和海藻 |
3872 | 我が門の榎の実もり食む百千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさぬ |
3873 | 我が門に千鳥しば鳴く起きよ起きよ我が一夜夫人に知らゆな |
3874 | 射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の身の若かへにさ寝し子らはも |
3875 | 琴酒を押垂小野ゆ出づる水ぬるくは出でず寒水の心もけやに思ほゆる音の少なき道に逢はぬかも少なきよ道に逢はさば色げせる菅笠小笠我がうなげる玉の七つ緒取り替へも申さむものを少なき道に逢はぬかも |
3876 | 豊国の企救の池なる菱の末を摘むとや妹がみ袖濡れけむ |
3877 | 紅に染めてし衣雨降りてにほひはすともうつろはめやも |
3878 | はしたての熊来のやらに新羅斧落し入れわしかけてかけてな泣かしそね浮き出づるやと見むわし |
3879 | はしたての熊来酒屋にまぬらる奴わしさすひ立て率て来なましをまぬらる奴わし |
3880 | 鹿島嶺の机の島のしただみをい拾ひ持ち来て石もちつつき破り早川に洗ひ濯ぎ辛塩にこごと揉み高坏に盛り机に立てて母にあへつや目豆児の刀自父にあへつや身女児の刀自 |
3881 | 大野道は茂道茂路茂くとも君し通はば道は広けむ |
3882 | 渋谿の二上山に鷲ぞ子産むといふ翳にも君のみために鷲ぞ子産むといふ |
3883 | 弥彦おのれ神さび青雲のたなびく日すら小雨そほ降る一云あなに神さび |
3884 | 弥彦神の麓に今日らもか鹿の伏すらむ皮衣着て角つきながら |
3885 | いとこ汝背の君居り居りて物にい行くとは韓国の虎といふ神を生け捕りに八つ捕り持ち来その皮を畳に刺し八重畳平群の山に四月と五月との間に薬猟仕ふる時にあしひきのこの片山に二つ立つ櫟が本に梓弓八つ手挟みひめ鏑八つ手挟み獣待つと我が居る時にさを鹿の来立ち嘆かくたちまちに我れは死ぬべし大君に我れは仕へむ我が角はみ笠のはやし我が耳はみ墨の坩我が目らはますみの鏡我が爪はみ弓の弓弭我が毛らはみ筆はやし我が皮はみ箱の皮に我が肉はみ膾はやし我が肝もみ膾はやし我がみげはみ塩のはやし老いたる奴我が身一つに七重花咲く八重花咲くと申しはやさね申しはやさね |
3886 | おしてるや難波の小江に廬作り隠りて居る葦蟹を大君召すと何せむに我を召すらめや明けく我が知ることを歌人と我を召すらめや笛吹きと我を召すらめや琴弾きと我を召すらめやかもかくも命受けむと今日今日と飛鳥に至り置くとも置勿に至りつかねども都久野に至り東の中の御門ゆ参入り来て命受くれば馬にこそふもだしかくもの牛にこそ鼻縄はくれあしひきのこの片山のもむ楡を五百枝剥き垂り天照るや日の異に干しさひづるや韓臼に搗き庭に立つ手臼に搗きおしてるや難波の小江の初垂りをからく垂り来て陶人の作れる瓶を今日行きて明日取り持ち来我が目らに塩塗りたまひきたひはやすもきたひはやすも |
3887 | 天にあるやささらの小野に茅草刈り草刈りばかに鶉を立つも |
3888 | 沖つ国うしはく君の塗り屋形丹塗りの屋形神の門渡る |
3889 | 人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ |